【札幌市IT経営戦略セミナー講演録(未定稿)】

地方の時代における情報化推進の課題(後半)

2.情報革命のもたらすもの
 「情報革命」。なんとなく世の中大きく変わりそうだな,という感じがあるわけですが,実際に行政をやっているとあまり大きな流れを実感できない,なんだか難しいパソコン操作をやれと言われてちょっと面倒くさくなったな,という感じをお持ちの方も多いと思います。
 実は政府全体としましては,2001年の1月にe-Japan戦略というものを作りまして,5年以内に日本は世界最先端のIT国家を目指す,という目標を立てました。実はその目標を立てて政府としてテコ入れをした成果がだんだん出てきておりまして,この前出た情報通信白書に出ている数字をご紹介したいのですが,インターネットの普及人口,これが現在5593万人になります。人口規模で言えばアメリカに次いで世界第2位です。インターネット普及人口は急速に増えてきている。
 それからインターネットでも,ブロードバンド,高速で常時接続する方々がどれくらいいるか,光ファイバのサービスとか,メガビットという高速回線でインターネットに接続されている方がどれくらいいるかというと,なんと1年間で34倍に増えているのです。約38万人,新しく1年間で加入されています。これは典型的に物価が安くなった例だと思うのですけれども,つい1年前まではブロードバンド環境,高速回線への接続料は日本は諸外国より高かった。今日本は一番世界で安くなっている。ADSLに月々2500円で入れる。世界でそんな国はないのです。これだけ安くなってくると爆発的に普及すると思います。
 実は私は北海道にいるときに自宅にインターネットを入れまして,当時「北海道ならISDN」とNTT北海道が宣伝していました。ISDNは2倍になる,というだけですが,ADSLは1.5メガとか8メガとか言っています。それはどれくらい違うのか。まず回線速度の単位のことを申しますと,キロは1000倍,メガは100万倍,ギガは10億倍,テラは1兆倍,ペタは1000兆倍。ISDNは64キロビットだとすると,CD1枚,パソコンに取り込むのにどれくらい時間がかかるかというと2時間半もかかった。ところがADSLで8メガになるとダウンロードに1分。それくらいものすごく高速化が進んでいる。ちなみに光ファイバだと100メガビット,6秒で取り込める。映画1本をダウンロードしようとするとISDNは125時間。ADSLだと約1時間。光ファイバーだと5分。5分で取り込めるなら,ビデオを借りて巻き戻すよりもその場で取り込んで見るほうが便利だなと,そういう時代がすぐそこまで来ていると思います。
 そういう意味で言いますと,行政サービスにおいても,ブロードバンド化,インターネットの回線速度がどんどん速くなるということが重要になってくる。インターネットでどういう行政サービスが考えられるかといいますと,例えば今,資料で付けておりますが,電子自治体を進めると同時に,市役所の支所だとか,学校,公民館,こういった公共施設を,地域公共ネットワークで結んでいこうという事業を行っております。電話回線を借り上げて結ぶ,ということではできないサービスを,光ファイバ網でやっていこう,と考えておりまして,行政情報を普通に提供する,例えば施設予約をします,というサービスを提供するときだとだいたい500キロビットあったらできます。これがテレビ会議による行政相談,学校の教育,医療事業など,映像や動画を見せましょう,となると最低でも1.5メガ必要です。それからもう少し回線速度が速くなると,防災などに対応するため,リアルタイムで動画情報を流す。これは今,世田谷区で行っているのですが,一番高い高層の建物の天辺に防災用のカメラが設置してありまして,全部リモートコントロールで,例えばどこかで火事が起こって119番の通報が入ってきたときに,その住所をおすだけで映し出される。火事がどれくらい延焼しているか,建物の屋上に人が逃げているかなど,全部わかる。そういう画像情報を消防や警察に流す,そういう回線になってくると6メガビット。これはひとつの回線を使っている状況なので,大勢の人が動画情報をとるとなると,各端末の数だけバックボーンとなる基幹回線の容量が必要になってくるのですが,おそらく高速化することによって,市役所本庁舎でなければ見られなかった各種のサービスが区役所でも見られるようになる。典型的な例が,世田谷区役所が行っているのですが,現況確認です。建築確認をやるときには,ここに家を建ててよいかどうかは,何メーター以上の公道にきちっと接しているかどうかを確認しなければならないのですが,おそらく全国の自治体ではほとんどが道路の台帳を見ていちいちチェックしている。世田谷区はGIS,地図情報にデータを全部落とし込み,各出先機関を光ファイバ網で結んだ。どうなるかというと,今までは台帳原本のあるところに行かなければならなかったものが,ネットでつながっているとどこでもチェックできる。世田谷区だけでだいたい年間5千件くらい建築確認件数があるのですが,だいたい2万回くらい窓口に来るらしいですね。それが今まで本庁舎の前でズラーッと並んでいたのですが,それが一挙に解消です。そういう意味で言いますと,ネットワーク社会になってどれだけの行政サービスが受けられるか,ブロードバンドになると,こんなサービスもできるのかという事例がどんどんでてくると思います。テレビ会議システムなども,世田谷の例をひとつ申し上げますと,税務相談で活用されています。住民がいろいろ相談を持ってこられるわけですが,その人たちに対してあまり知識がない職員がいい加減に対応すると後々こじれることがあります。本当はきちっと専門的な知識をもった人間が対応すればいいのですけれども,では各区役所に知識を持った専門家をおけるかというとなかなか難しい。そういう意味では,税務全般の知識をもった職員を区役所にひとり配置した上で,専門家を本庁の税務課に,各税目ごとに待機させておいて,テレビ会議システムで本人の顔を見ながら,実際に税務関係の資料を見ながら,直接一番詳しい担当官が納税者の相談に応じる,という体制が考えられます。そういう意味で言うと,人材の有効活用という意味でも,地域公共ネットワークを活かした電子自治体というのは可能性をもっていると考えているところでございます。
 ちょっと3番目の自治体の戦略に踏み込むような話になりましたが,札幌というのはITに関して可能性のあるところだと申し上げましたけれど,いくら可能性のある産業でもその規模が小さければ札幌の人口を食わせていくわけにはなかなかいかない。
 ここで,情報通信産業というのが今の日本の中でどれくらいのウエイトを占めているのかということを,情報通信白書の数字でご紹介しますと,日本の全産業の市場規模がだいたい980兆,その中で,実は情報通信産業は,主な産業の中で最大規模なのです。114兆になります。建設業が81兆,3番目の卸売りが66兆ということで,卸売りだとか建設業がものすごく規模が大きいかと思えば,実は情報通信の産業規模が膨らんでおりまして114兆まできている。雇用の人数で申し上げますと,全産業の雇用者数が5356万人,そのうち,情報通信産業は実は3番目です。一番多いのが小売業,630万人。建設業530万人。情報通信産業382万人。雇用規模で言うと,小売業だとか建設業が多いのですが,ただ,この建設業なり小売業というのが,例えば情報通信を活用した小売業,となったときにおそらく今の雇用は抱えられない。そこで働いていた人たちが仕事ができなくなるという可能性があるのではないか。そこで,ひとつ有力な雇用の吸収先として「情報通信産業」というのが考えられます。ただ,情報通信産業の場合は,働いている人たちの暮らしている場所というのが極端に偏っている。しかもその傾向がますます加速されているのではないかというのが,私のひとつの懸念です。実は,いろいろ若い人材がいかに能力を発揮して仕事をするか,ということで,田舎に公共事業を一所懸命に持っていって,本当に地元の長男坊が生きがいを持って働けるかどうかということになりますと,なかなかミスマッチが生じかねないと私は先ほど申し上げましたが,高度なIT人材といいますか,そういう人材がどこに住んでいるか,データを調べてみましたら,だいたい8割が三大都市圏,半分以上は東京にいる。その傾向が一層加速化している。
 皆さん新聞記事などでご覧になって気が付かれたかと思いますけれども,典型的に言うとNTTですね。NTTは昔,地方の局にそれなりに技術者を抱えていた。ところが今ブロードバンドの時代になって,遠隔操作で全部チェックできるとなると,現場の支局に人がいなくてもいいのです。端的に言うと,ちょっとコンピュータが動かなくなったな,というときに,一番われわれが手軽にできる操作としては「Ctrl+Alt+Delete」で,要するにリセットしてあげるだけでたいがいは直ります。リセットするだけだったら,別に故障したサーバーのところにいなくても,リモートコントロールで東京からピッとやればすむのです。
 情報通信が発達すると,地理的なハンディキャップがなくなるということで,これから「地方の時代」,まさに情報通信が地方の時代を作るんだ,という論調が非常に多かったと思うのですが,逆もまた真なりということがあります。昔,道路を整備すれば過疎が解消されるということで,一生懸命道路を整備したのですが,一方でその道路を使って若者が都市に流れ出していく。結局どちらでもイコールという,同じ土俵で勝負ができるということになると,地方に住んでいても都会と同じことができる,逆に都会に住んでいても,わざわざ地方に住まなくても全部物事が片付く,ということになると,人が住みたいところに雇用が生み出されることになる。端的に言うと,田舎に住みたいか都会に住みたいかと言ったときに,現実の世界から言うと,今はまだ東京に住みたいという人が多いのだと思います。
 「SOHO」という言葉がありますが,「Small Office Home Office」ということで,もうブロードバンド時代になったのだから,自宅で,環境のいい中で,仕事をしたらいいじゃないですか,それでも都市に住んでいるのと遜色なく仕事ができますよ,となってきたとき,実際に地方に移住して仕事をしている方がどのくらいおられるか。何人かはおられます。ただ,そういった方々には,ひとつ特徴があるんですね。その地域できちっとコミュニティを作っておられる。テレワーカーに対するアンケート調査について,ひとつ,自宅でインターネットを使って仕事をする際のデメリットということで,この2年間で非常に伸びた数字が,「コミュニケーションが少なくなる」。要するに会って話をしていろいろ議論する中でいいアイデアが出てくるし,やっぱり顔を合わせてコミュニケーションしなくてはいけない,この部分が抜けているということが,テレワーカーの持つ悩みとなっているようです。そういう意味で言うと,これからのネット社会,東京でも札幌でもどちらでも仕事ができるとなったときに,その人たちが札幌に住むことを選ぶかどうか,これは札幌市の行政を進めていく上で非常に大きなポイントとなっていくのではないか,というふうに考えております。

3.地方自治体におけるIT戦略の方向性
 これから情報革命,ブロードバンド時代になって,単に電子政府,電子自治体ということで,今まで紙情報だったものを電子情報に置き換えるということだけではない,大きな組織のあり方自体を変える流れがあるのではないかということで,ポイントになると思っていることを最後に3点ほど申し上げたいと思います。
 ひとつは情報公開ですね。情報公開の条例を作りました。実際何が起こったかといいますと,行政は何か悪いことをしているのではないか,そういう興味を持った方々が実際窓口に来て,いろいろボロボロ出てきたということもありましたが,今まで興味を持った方というのは,わざわざ役所まで来て「この件について見せてください」という情報公開でした。ところがインターネットというのは非常に便利な道具でありまして,ホームページに載せておけば,見たい人はどうぞ見てください,という状態,いっぺんに大勢の人たちが多方面に渡る情報を見ることができる。これは行政にとっては大きな力になるのではないかと思っております。昔,江戸時代には,藩というのは,住民にはあまり物事は知らしむべからず寄らしむべしと言いまして,任せておけば大丈夫だと,いちいちそんなこと聞かなくてもわれわれはちゃんとやってますからと,そういう時代もあったかと思うのですが,これからはそういうことをやっていたのでは,全国の自治体の中で取り残されると私は思っておりまして,そのためにはやはり住民の行政参加,その前提としての情報公開,これをネット上でどんどんやっていったら良いのではないかと思っております。
 情報公開というと役人にとって不都合かな,という印象をもたれる方があるかと思うのですが,私は情報公開というのは,本当にやる気があって公正な行政を進めようと思っている公務員には味方になると思います。鳥取県でこの間実現したのですけれども,いろいろ議員の先生の圧力みたいな話が一時ございましたけれども,鳥取県では議員の先生からどういう依頼を受けたかということを全部メモに残して情報公開するということをやったのです。やはり,物事が裏に回って根回しの話でやってしまうと,どうしても声の大きい人,あるいは力を持った人との関係で,本当に目指すべき行政が,場合によってはそのまま通らないような可能性も少なからずあったかと思います。やはり本当に行政をやっていく,これが市民のためだということであれば,これは堂々と公開していけばいいんですね。逆にどんな要望,陳情というのも,われわれはこういう理由でできません,こういうものはやりましょう,これを市民の前に全部公開します,オープンにします,ということになれば,選挙で選ばれる人は無茶は言わなくなる。私は,情報公開は本当にまじめに行政をやっていこうという人間にとっては大いなる味方になると思っております。しかもその行政の情報について,関心のある市民にわざわざ役所まで来て公開請求してくださいということになれば,忙しい人はできるわけがない。それをホームページに入れておけば,興味を持ってインターネットで夜にちょっと覗いてみたらいろんな市の行政がわかる,そうなれば関心を持つ人が増えていく。
 それから,情報公開という前提については,その先の住民参加という話につながっていくと思います。eデモクラシーという言葉でよく言われているのですが,各自治体で全国的に電子会議室を市民に開いているところが多い。札幌市も実験的にeトークさっぽろというのをやっておられたと伺っておりますが,電子会議室にいろいろ意見を言ってこられる方は,今までの紙ベースや電話で意見を言ってこられた住民の方と全く階層が違っているようです。しかも非常に意識の高い人たちが市政に参加する道が開けたのではないかというのが私の印象であります。インターネットですべて片付くというわけではないですが,電話だとか紙以外に,新しい情報ツールを使って市政に対して意見が言える。その前提となる情報を得るために,だいたい普通のサラリーマンだったら,わざわざ仕事を休んで情報を取りに行ったり,役所のあいている時間に市政にわざわざ関わっていく,そんなことをする暇があったらまじめに仕事をする,という人が多いと思います。しかし,インターネットが普及するようになって,今まで意識は高いけれども地域コミュニティに参加できなかったような人たちが,新しく地域の行政に関わることができるようになったのではないかと思っています。そういう意味ではITは住民参加の大きなツールとなるという側面があるのではないでしょうか。
 もうひとつは,地域コミュニティというものが,札幌も含め,全国的に都市部で弱くなってきている。自治会というのが法人格を持って,いろいろな登記もできるようになったのですが,やはり田舎に行きますと,地縁血縁といいましょうか,ひとつのエリアで近くに住んでいるからということで人々がまとまるという形の地域コミュニティなのですが,札幌くらい大きな都市になると,自治会単位で集まってなにかやるかというと,なかなかそういうことにはならない。ただ,このインターネット,その中でも,電子メールを使ったメーリングリスト,これを活用すると,同じ意識興味を持った人たちを束ねるといいますか,そういったグループを活性化させる手法としては非常に大きな威力を発揮するのではないかというふうに私は感じております。
 私自身が体験した話をひとつご紹介してまいりたいと思いますけれども,実は私,山に登るのが趣味でして,札幌市内に“札幌岳”という山があります。それから“空沼岳”という山があります。この二つの山が実は公共交通機関で,要するにバスでふもとまで行って縦走できるという,札幌市内で貴重な縦走コースですね。これは一泊で行く価値のある行程だと思います。これだけの180万都市で,すばらしい二つの山を結ぶ縦走路があるのですが,もともと国有林だったのでしょう,営林署の手も入らないでぜんぜんほったらかしになっている。一度2年前の8月に縦走したのですが,ガイドブックを見たとき,この縦走路はすばらしいと書いてあった。しかしガイドブックが出てから何年か経ったら笹ぼうぼうで,大変な目にあいました。4時間以上かかって一生懸命掻き分けながら山を歩いた。そのときに私は山登りの愛好家のメーリングリストに入っていたのですが,「縦走路がすばらしいとガイドブックに書いてあるが,とんでもない目にあった。笹ぼうぼうだ。このままでは廃道になってしまう」とメーリングリストに流したのですね。そのメーリングリスト自体は,メンバー数で言うとだいたい200〜300人くらいが常時参加するような人たちなのですけれども,そうしたらですね,実は一人の登山者にとっては,いくらみんなのためだと思っても登山道の笹刈りをしようなどとは思いません。「もう行くのをやめよう」となるのです。ところが行く人がみんなひどい目にあって,みんなでやればできるのではないかと思うのですが,これがなかなか大都市になると束ねる力がない。ところが,北海道の山歩きが好きだ,という人たちがメーリングリストに集まって,そこにパッとひとつの情報を流したら,みんなで笹刈りをしようかということになったのです。
 基本的には行政の力を借りずに,市民で関心を持って,必要だと思っていたけれども一人の力ではできないことを市民が束になって,ボランティアの力で,まさに行政の目が届かなかったところをカバーする。そういう新しい地域コミュニティ,ボランティアの力の結集,あるいはそれが発展するとNPO活動になってくるのでしょうが,たまたま近くに住んでいるという自治会,これでは都市部のコミュニティはもたない。たまたま近くに住んでいるということではなくて,同じ問題意識,同じ関心を持っている人たちが集まって何かをやるというときは,このインターネット,電子メール,メーリングリストというものが,大きな武器になっていくのではないかと考えているところでございます。
 時間がきましたので,最後に余談ながらひとつ申し上げますと,このメーリングリストは,ちょっとみんなで会って一杯飲もうか,というときに非常に役に立ちます。今回,私は札幌へ講演に来たのですが,今日の晩も,ちょっと札幌に出張するとメーリングリストに流したら,当時の仲間たちが「牧さんが来るなら飲もうか」ということになりました。ぜんぜん道庁の行政とは関係ありません。普通の主婦の方,マスコミの方,学校の先生,ごく普通の札幌市民の皆さんが,私がちょっと出張に行くといったら,じゃあ久々だから一緒に山の話でもしようかと集まってくれる。こういった新しい市民の結集,こういう大きな流れというのが,まさにこの情報革命のもたらす一番のパワーになってくるのではないでしょうか。
 今までは行政が,政府が一番重要な情報を握っていて,ある意味そこで仕切ってきたのです。インターネットというのはそもそも何から生まれたかというと,軍事技術なのです。なぜ軍事技術としてインターネットを開発したかというと,当時アメリカは核戦争に備えるためにインターネット技術を開発したのです。一箇所中央集権で,巨大なコンピュータで全部を統括しようとしたら,そこを一発核爆弾でやられたらアメリカは麻痺してしまう。一箇所やられても,草の根のように,どこを分断されても全体のネットワークとしては耐久性を持つ,これがインターネットです。これを日本の社会が取り入れたとき,市民の草の根の活動を支えるのにはもっともふさわしいネットワークになるのではないかと思っております。まさに地方自治体が行政を進める際に,まさにその住民のニーズを吸収しながら,ある意味では何でも行政にお願いするのではなく,地域のこと,自分たちの関心を持っていることは,行政に頼らずにできることについては自分たちでやろうと,こういうグループ,新しいコミュニティの活動を支えるというのが,新しい情報革命の中で,地方行政にとっての一番の大きなポイントではないでしょうか。そういういろいろな地域コミュニティ,新しいコミュニティができてくれば,おそらく札幌という都市はますます魅力を増してくるでしょう。東京といっても図体がでかいだけかもしれません。今は大企業にかなりの人材がある意味で縛りつけられている状態にあると思います。札幌でも実際に情報通信産業のベンチャーを立ち上げてやっておられる方がいらっしゃる。こういう動きがますます加速するとしたら,札幌というのは他の自治体と違って,市民の声が本当に行政に反映される,あるいは行政に頼らなくても市民のグループでいろいろな地域の問題を解決する,それだけのことができる都市,それだけの潜在性,可能性が大いに札幌にあると思います。私も3年間札幌に住んだ人間としては,ぜひ,札幌市がそんな都市になってほしいと願っているところでございます。以上です。どうもありがとうございました。