【月刊「自治フォーラム」2月号寄稿】

知縁コミュニティと地域SNSの展開

1.はじめに
 平成19年8月31日、神戸市にある兵庫県公館で第一回地域SNS全国フォーラムが開催された。全国各地から集まった地域SNSに携わるメンバーで会場は埋め尽くされ、熱気に溢れていた。参加者は、それぞれ地域SNSの持つ可能性について手ごたえをつかまれたのではないかと思う。
 今、全国でじわじわと地域SNSの輪が広がっている。地方自治情報センターの調査によると平成18年12月時点で全国210の地域SNSがあり、中にはほとんど休眠状態に陥っている地域SNSも少なくないが、今も新しく元気な地域SNSが次々と立ち上がっている。平成19年5月にまとめられた総務省コミュニティ研究会の中間報告でも地域SNSがコミュニティ再生に向けた有力なツールとして取り上げられている。

2.ネット上における安心・信頼のコミュニケーション空間
 インターネットの世界は、自由で匿名性が高く、世界中から情報を入手でき、また広く情報を発信できる。しかし、逆に情報が多すぎて洪水状態となり、本当に必要な情報を的確に入手することが難しくなっている面もある。また、ウイルスやスパイウェアなどへの感染も危惧され、匿名性が高いだけにワンクリック詐欺や匿名掲示板における誹謗中傷などの被害も後を絶たない。さらに、インターネット上に個人情報が流出するとデジタル情報は容易にコピーできるため、取り返しがつかない被害に遭う危険もあふれている。インターネットの便利さを生かしつつ、いかに安心で居心地の良いコミュニケーション空間を作り上げていくか。悪意ある荒らし行為を寄せつけず、自分たちが暮らす社会を良くしていこうという人々の善意を束ねていける建設的なコミュニケーション空間をどう作り上げていくか。奥は深いけれど決して息苦しい閉鎖空間でなく外部にも適度に開かれた安心で快適なコミュニケーション空間から生まれた着想がメンバーの共感を呼び、新しい動きとなって現実の地域社会を変えていく力になる。そんな地域SNSの目指すべき姿が浮かび上がってくる。

3.新しい知縁コミュニティの形成
(1)地縁コミュニティ、会社コミュニティの限界
 本当に心と心が通じ合うコミュニケーションは、フェイスtoフェイスでなければ難しい。相手の表情や息遣いもわかる対面のコミュニケーションに比べ、文字情報だけのやりとりでは伝えられることに限界があり、誤解を招きやすい面がある。コミュニティの形成にあたっても、対面のリアルコミュニケーションが重要な意味を持つが、フェイスtoフェイスのコミュニケーションを行うには、同じ時間に同じ場所にいなければならないという制約条件がある。
 旧来のコミュニティは自治会、町内会など地縁コミュニティが基本だった。地域は生きるための単位でもあり、農業用水の管理、火事や水害への対応をはじめ暮らしを成り立たせるために地域での協力は不可欠だった。それが、戦後の高度成長に伴い、特に人口が急増した都市部ではコミュニティが希薄化していった。人は何らかのコミュニティに属していないと精神的にも安心感が得られないし、単身者や核家族にとって共助がないと生きていくにも何かと不便である。そこでサラリーマン層の増加した都市部において形成されたのが会社コミュニティだった。会社で顔を合わせる時間は長く、社員の福利厚生から結婚式、葬式まで会社もコミュニティメンバーの面倒を良く見てくれた。一方、会社コミュニティでは地域社会は守れないので、企業等からの豊かな税収を背景に行政が従来は大家族やコミュニティの担っていた保育、介護、道路清掃、除雪などの公的機能を幅広くカバーして担うようになった。
 だが、経済のグローバル化や企業間競争の激化によって、会社コミュニティに多くを期待できない時代が訪れている。会社を擬似コミュニティとする家族型経営は社員の忠誠心を高めることはできるが、全ての社員の面倒を手厚く見ることはコスト面でも困難になっている。派遣や請負、フリーターなど終身雇用の正社員以外のメンバーが増え、正社員であってもリストラされる状況において、もはや多くの会社は居心地の良いコミュニティとしての機能を失いつつある。
 一方で都市化する地域において従来コミュニティが担ってきた公的機能を肩代わりしてきた行政はどうかというと、少子高齢化、人口減少社会の到来により税収の伸びも期待できない中で、公のことは全て行政が担うという形ではやっていけなくなっている。まさに新しい公の担い手の出現が求められているのである。もちろん、従来型の地縁コミュニティの重要性に変わりはなく、自治会や町内会などがそうした機能をしっかり果たす地域もあるだろう。だが、団塊世代の大量退職によって会社人間が地域に帰ってきた時、自治会や町内会など従来型の地縁コミュニティだけで会社人間の十分な受け皿になれるかどうか。実際にNPOやボランティアグループなど従来の地縁コミュニティや会社コミュニティとは違った新しい動きが生まれている。

(2)知縁コミュニティの時代へ
 インターネットは、情報の収集・発信の両面において個人をエンパワーする。従来の地域団体や会社といった既存組織に埋もれていた人々の潜在力を生かすチャンスが訪れている。そこで今、期待されているのが、会社や地域団体など従来型の組織とは異なり、共通の志や価値観、問題意識等を共有するメンバーが集まる知縁コミュニティの形成である。
 1人が1コミュニティにしか所属できず、そこから排除されたら生きていけない状態においてはイジメも発生しやすい。そうした閉鎖的なコミュニティではどうしても個性の発揮は抑制され、実はキラリと光るものを持っている人でも埋没しがちになる。その点、知縁コミュニティでは、子育て支援、里山保全、山登り、高校の同窓会、伝統文化の保存など、それぞれに関心を持ったメンバーが集まり、自発的に行動する。そうした知縁コミュニティが地域において複層的に存在し、会社や地域団体など既存組織の壁を超えた人と人のつながりを形成する。知縁コミュニティの中心となって活動する人、知縁コミュニティ同士をつなぐ橋渡し役となる人など、様々なキーパーソンが活躍するようになる。そうした知縁コミュニティのネットワーク展開を手助けしてくれる力強いツールになると私が期待しているのが地域SNSである。ICTは距離や時間の制約を超えたコミュニケーションを可能にする。しかし、それはあくまで顔の見えるメンバー間のリアルコミュニケーションの補完であり、人間的な信頼関係が豊かなコミュニケーションの裏打ちとして欠かせない。地域SNSは、リアルな信頼関係で結ばれた個人個人を起点とした複層的な知縁コミュニティの形成を支援するインターネット上の便利なコミュニケーションツールであり、まさにこれからの地域社会におけるソーシャルキャピタルの醸成を強力にサポートすることが期待されている。

4.地域SNSの特長
 地域SNSを利用したことがない人に、その魅力を口頭で説明してもなかなか理解を得るのが難しいという経験をされた方も少なくないだろう。地域SNS全国フォーラムの開催をきっかけに兵庫県の地域SNS「ひょこむ」に参加した井戸知事が投げかけた感想は「単なるインターネット上の『交換日記と公開掲示板』に過ぎないのでは?」というものだった。一見すると単なる交換日記と公開掲示板に過ぎない地域SNSがどうしてこれだけ多くの人々を惹きつけるのか。
 インターネットは情報の洪水状態になっており、一方で個人情報の流出などの危険も溢れている。こうしたインターネット空間で地域SNSが優位性を発揮していくためには、どのような特長を伸ばしていけば良いか、兵庫県の地域SNS「ひょこむ」(hyogoのhyoとコミュニケーションやコミュニティのcomからhyocomと名付けられた)を例に考えてみたい。

(1)発信情報のアクセスコントロール
 情報公開範囲の選択設定と言い換えてもよいが、要は自分の日記やコミュニティへの書き込みが見られる人の範囲を段階的に選ぶことができる点である。「ひょこむ」では、トモダチにしか見せない(ここだけのナイショ話)、地域SNS参加者には公開する(誰が自分の日記を見てくれたか足あと機能でわかる)、インターネット一般に外部公開する(世界に向けた情報発信)といった開示範囲の選択が可能である。ある程度閉じられた空間でしかコミュニケーションは深まりにくいものだが、逆にそれだけではタコつぼ化してしまう。一般に情報を公開すると幅広く大勢の人に見てもらえる可能性は高まるが、誰が書いたかわかってしまう状況ではどうしても書ける内容は限られてしまう。地域SNS上のトモダチが少ない人は、公開された情報しか見られないのでつまらないと感じるかもしれないが、気の合うトモダチのいる人は、まさに限られたメンバーによる井戸端会議を楽しむことができるのである。
 ひとつの地域SNSにおいても内容によって伝える人の範囲を使い分ける、ちょっとした技術的工夫によってこうしたリアルな地域社会では当たり前にやっていることをインターネット上でも実現できれば、コミュニケーションはどんどん深くあるいは幅広く豊かになっていくだろう。

(2)関心情報の一覧表示
 インターネットは情報の洪水状態となっているが、自分が欲しい情報だけがひとつの画面に一覧表示されれば便利である。逆にログインしても関心のない情報が多く並び、何回もクリックしなければ関心ある情報を入手できないようでは人々の足は遠のいてしまう。
 「ひょこむ」では、ログインして最初に表示されるマイページに、トモダチの日記や参加コミュニティへの書き込み、メッセージなどの新着情報が項目表示される。トモダチが増えてきたらマイページに表示する人を絞り込むこともできる。実はこうした「人」を介した情報のフィルタリングというものがSNS上で実現されている点に私は注目している。これはリアルな現実生活における口コミ情報と似ている。まさに自分がこれぞと思う友人・知人から入手する情報こそが役立つ情報、知っておきたい情報なのである。
 ちなみに「ひょこむ」では、そのコミュニティの存在すら一般参加者からは見えない非公開のステルスコミュニティが存在する。具体的には運営検討会議メンバーが実名で議論するコミュニティなどで使われている仕組みであるが、他のコミュニティと同様マイページで一元的に新着情報を入手できるので便利である。
 大手ポータルサイトでは本人に関心のない情報も含めて項目が多数並ぶタイプが多かったが、googleのように関心情報を選択してマイページに表示させるタイプが、これからのトレンドになるだろう。そして、SNSに限らず、将来的にインターネット上で個人のポータルサイトに発展する可能性のあるサイトには、この関心情報の一覧表示と発信情報のアクセスコントロールの機能が欠かせないものとなるだろう。

(3)周囲の反応がわかるpull型ツール
 コミュニケーションツールには、情報を相手に送りつけるpush型と向こうから見に来てもらうpull型がある。メーリングリスト、メールマガジンなどはpush型だが、あまり関心もない情報を送り続けられると迷惑がられ、そのうちメール受信箱で仕分けされ全く見返られなくなってしまう。一般のブログや電子掲示板などはpull型だが、強い求心力がなければなかなか見に来てもらえないもので、受け手側でお気に入り登録やRSSリーダーなどでpull型サイトにアクセスしやすくする工夫が講じられる。メールのように1対1のpush型コミュニケーションだと相手方に返信しなければという負担感を与え、また来ない返信を待つほうにもストレスがたまりがちである。「ひょこむ」の場合、日記やコミュニティへの書き込みにコメントがつく、あるいはコメントがなくても足あと(アクセス履歴)がついて誰が見に来てくれたかわかるほか、アクセスカウンターで訪問者数も把握できる。日記を書いたり、コミュニティに書き込みをしたりした場合、それを周りの人が読んでくれたか、どんなコメントが返ってくるか、その反応に人は興味津々で強く関心を抱くものである。こうした手ごたえが緩やかなpull型のコミュニケーションツールでありながら地域SNSが人を惹きつける魅力となっている。まさに自分の言動に対する周囲の反応が把握できることがポイントなのである。
 なお、「ひょこむ」にはメッセージやコミュニティに書き込みがあればメール配信する機能もあり(配信を停止することも可)、メールボックスを情報の一覧入手先としている人にはpush型で情報提供を行うこともできる。

(4)招待制、後見人制度による信頼性の確保
 インターネット上の匿名掲示板では、よくもまあと呆れるようなひどい書き込みも見られる。いくら自由はあっても、誹謗中傷や風俗営業への勧誘などが堂々と書き込まれるようなサイトになってしまっては、人々が離れていってしまう。
 mixiのような大手SNSで匿名が許容されているのに対して、「ひょこむ」を始めとする地域SNSでは実名登録制、さらに後見人制度をとっている。この敷居の高さが安心感を高め、居心地の良いコミュニケーション空間を作り上げることに貢献している。
 悪意ある人物が虚偽登録で紛れ込んできたり、メンバー間のトラブルが持ち込まれたり、実はシステム運用以外の負担が地域SNS運営事務局にとって大きな悩みの種である。「ひょこむ」では本人の実在性確認やトラブル解決にあたって、そのメンバーを招待した人に後見人として協力を求めている。現実社会における各種のアソシエーションにおいても、紹介者が責任を持つという形態が多く見られるが、それに倣ったものである。もともとインターネットの世界は匿名性が高く自由なところが特長であったが、傍若無人に荒らし回る人を止められないようでは安心で居心地の良いコミュニケーション空間を作り上げることはできない。知縁コミュニティの形成にあたっては、現実社会におけるコミュニティ形成のための昔ながらの知恵を生かしていくことも重要である。インターネットの世界はこういうものだといった先入観にとらわれず、必要な技術開発により現実社会におけるコミュニケーションの知恵を取り入れていく姿勢が求められている。

(5)個人を起点としたネットワーク
 地域SNSを愛用している人から「つながっている」感じが良いという声をよく耳にする。これまでの電子会議室やメーリングリストなどが意見交換等の「場」だったのに対し、地域SNSでは個人を起点としたネットワークが形成されている。
 もちろん、個々のコミュニティを見ると、地域SNSでも従来の電子会議室と同様の難しい問題に直面している。場の雰囲気を逸脱した書き込みもあれば、実名がわかってしまうと陰に陽に発言に対する圧力がかかる場合もある。かえって地域というリアルな地域社会に近いがために、地域社会で現実に起こるのと同じような対立関係が持ち込まれることもある。
 ただ、地域SNSでは、休止状態となってしまうコミュニティはあっても、個人を起点とするネットワークさえ生きていれば、課題に応じて新しいコミュニティが次々と立ち上がっていく。気の合わない人とはトモダチにならない、非表示にするなど近づかない工夫をしながら気の合う仲間と快適にコミュニケーションを図ることも可能だ。
 ブログも個人を起点としているが、1対多、しかも不特定多数との間でコミュニケーションが行われるのに対し、地域SNSの場合、特定された多対多の緩やかなつながりが形成される。
 地域SNSには従来からの人間関係を掘り起こし、つながりを深める効果がある。地域SNSをきっかけに音信不通だった高校時代の同級生と再会したといったケースである。また、トモダチのトモダチ、あるいはコミュニティへの参加によって新しい人と人のつながりを広げていく効果もある。従来からのつながりの強化、新しいつながりの形成という両面において地域SNSの可能性は大きい。広がりのある人的ネットワークの形成という点において、従来の電子掲示板やメーリングリストを超えるコミュニケーションツールになっていると言えよう。

5.地域SNSの展開
(1)巨大SNSとの差別化
 地域SNSへの取り組みに対しては、mixiだけで十分、複数のSNSに入るのは面倒といった声をよく耳にする。確かにmixiは大勢の参加者があり、複数のSNSにいちいちログインするのは面倒であり、mixiで全て事足りると思う人が多いこともうなずける。にもかかわらず、何故地域SNSなのか。
 一つには、不特定多数の参加者が1千万人を越える巨大SNSは、もはや安心してコミュニケーションできる空間ではなくなっているという点である。実名で登録していたばかりにプライバシーの侵害にあったり、虚偽登録者による詐欺被害に遭ったりするケースも生じており、安心・安全という面では、ふつうのインターネット空間とあまり変わらなくなっている。
 また、民間SNSの場合、バナー広告などの収入も得なければならないことから、どうしても囲い込みモデルになってしまい、コミュニケーションツールとしてはベストとは言い難い仕組みとなっている。さらに、情報セキュリティの面から考えても、一千万人規模の巨大な個人情報の塊を特定の民間会社が一元管理することが果たして望ましいのかどうか。個人情報はある程度分散して管理するほうが、情報セキュリティ対策の面からも望ましい。

(2)リアルな地域社会との連携
 その地域を良くしていきたいという熱い思いを持ったメンバーが集まる地域SNSでは、動画や地図情報なども活用してリアルな活動と連携した動きが活発になる。まさに地域におけるフェイスtoフェイスのコミュニケーションの補完として、また新しいリアルコミュニケーションの輪を広げるきっかけとして、地域SNSの役割が期待される。その点でメンバーによるオフ会を頻繁に開催することが地域SNSを盛り上げていくために有効であり、そこから生まれたリアルな活動が地域の元気づくりにつながる。「ひょこむ」をきっかけとした兵庫県内における動きをいくつか挙げてみよう。
 まずは「コウノトリバーチャル博物館」。絶滅したコウノトリの自然復帰に取り組んできた豊岡で生まれたコウノトリのヒナの様子をメンバーが写真や動画付きで投稿したもので、国内では46年ぶりに自然界でコウノトリが巣立つまで温かいメッセージが数多く寄せられた。そして、「六甲全山縦走歓迎!ホッと宝塚おもてなしプロジェクト」。六甲全山縦走大会は毎年全国から2日間で4千人が参加するにもかかわらずゴール地点の宝塚市民には縁の薄かった神戸市主催のイベントだが、神戸市の須磨から宝塚まで56kmを完走した参加者を温かく歓迎しようと「ひょこむ」メンバーが中心となって立ち上がったもので、私も井戸知事と12時間45分(前年は10時間台)をかけて完走したが、縦走中の様子を「ひょこむ」に写真付きで携帯電話からリアルタイムにアップし、ゴール地点の宝塚駅前では足湯と甘酒で大歓迎を受けた。さらに、地域の食文化を生かしたB級グルメ「姫路おでんコロッケ」「田んぼに古代米で絵を描くプロジェクト」「姫路菓子博ワンセグ放送局」など、「ひょこむ」をきっかけとした様々な動きが始まっている。

(3)地域SNS間連携
 閉じられた空間でコミュニケーションを深める一方で、タコつぼに陥ることなく外にも適度に開かれた地域SNSを目指す場合、信頼できる地域SNS同士でインターネット一般に情報を晒すことなく連携を図れるようにできれば便利である。ブログなどインターネット一般に公開された情報ならRSSで新着情報を項目表示させることは可能だが、インターネット一般に公開できる情報は限られており、個人情報に関わる内容などは差し控えられることになる。また、コミュニティでも例えば高山植物の保護について情報交換するコミュニティの情報が一般に流出すれば盗掘を誘発するかもしれない。
 複数のSNSに参加するのは面倒である。しかし、他のSNSをメインに使っている友人の日記は読みたい、あるいは関心あるコミュニティの新着情報はチェックしたい。関心情報の一覧表示ということが地域SNSの魅力だとしたら、他の地域SNSとも連携してこうしたニーズに応える機能を備えたいものである。平成19年末から、「ひょこむ」(兵庫県)、「さよっち」(兵庫県佐用町)、「もりおか地域SNS」(盛岡市)、「松江SNS」(島根県松江市)などで地域SNS間連携の実証実験が始まった。しかし、機能面で地域SNS間連携が実現しても、それを実際につなぐのは人である。地域間交流の活発化に向けて地域と地域を橋渡しする人的ネットワークの形成こそが今求められている。

(4)他のメディア等との連携
 現在、地域SNSのユーザーはパソコンが中心だが、これから主婦層の利用やモバイルでの機動的な活用を想定すれば携帯電話で便利に使えること、さらに一般家庭に普及が進むデジタルテレビ端末でも接続して見られることが必須になってくるだろう。また、パソコンのキーボードを操作するのは苦手という人も多いだろうから、コミュニティFM、ミニコミ誌など他のメディアとの連携も有効だろう。宇治市を中心とした京都山城地域の「お茶っ人」では、お茶っ人新聞が創刊された。また、兵庫県佐用町の「さよっち」ではインターネットTV機能が搭載され、館山市を中心とする南房総の「房州わんだーらんど」ではカーナビと連携してリアルタイムで口コミの地域観光情報が入手できる試みも始まっている。また、「ひょこむ」で始まった地域通貨ポイントとの連携もその展開が楽しみである。地域における便利で安心な情報プラットホームを目指して地域SNSは技術的にも常に進化し続けることが求められている。

6.おわりに
 どんな地域SNSでもオープン当初は立ち上がりの勢いで参加者もアクセス数もある程度伸びていくものだが、スタートダッシュの盛り上がり時期を過ぎた後も数百人から千人規模のメンバーがアクティブに活動している地域SNSを見ていると共通の特徴が浮かび上がってくる。それは、地域を元気にしたいという思いを持つ人間的魅力に溢れたメンバー達がリアルな活動も織り交ぜながら地域SNSを井戸端会議のように楽しんでいることである。地域社会に新しい息吹を感じさせるプロジェクトが次々と立ち上がり、そうしたリアルな活動をきっかけとしてまた新しい人と人のつながりが生まれ、組織縦割りの壁を超えたフラットな情報共有により信頼関係のネットワークが広がっていく。いたずらに乗り気でもない参加者を増やしても冷めた鍋のような状態となり、地域SNSはかえって閑散としてしまう。地域SNSを発足させたコアメンバーの知人だけでなく、新しく参加したメンバーが自分自身の人的ネットワークを地域SNSに取り込んでいきたいと思ってくれるかどうか。医師不足が大きな課題となる中で若手医師を惹きつけるマグネットドクターの重要性が注目されているが、地域SNSでもブログやコミュニティの書き込み、そしてリアルな活動において人々を惹きつけるメンバー(「マグネットメンバー」と呼ぶ)の巻き込みが重要である。固定化したメンバーで地域SNSをタコつぼ化させることなく、リアルな活動との連携で新しいマグネットメンバーを核とした複層的なトモダチ関係の連鎖拡大が始まれば、アクティブユーザーも自然と増加していくだろう。バーチャルな世界で適度な距離感を保ちながらコミュニケーションを楽しむだけなら、地域SNSは全国規模の大手SNSにかなわない。現実の地域社会では人間関係のぶつかり合いが生じることもあるだろうが、それを乗り越えて地域の人々が複層的につながっていく過程で地域における課題解決力も高まるのではないだろうか。今、地域の人々が手を携えて自己実現を図っていくための知縁コミュニティの情報プラットホームが求められており、そこに地域SNSの真価を発揮する道が拓けるものと考えている。(以上、未定稿)

【参考】
 コウノトリバーチャル博物館
 ホッと宝塚 六甲縦走大会を盛り上げよう!

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